2000 年の状況について記してみましょう。この年、 Hatebur の 冷 間 フ ォ ー マ ー シ リ ー ズ で あ る COLDmatic はすでに 20 年以上活躍しています。 AKP 3-5、4-5、5-5 などのモデルは、業界の最先 端と見なされており、お客様の様々なニーズにお 応えするクレバーなソリューションを提供し、比較 されうるマシンとは一線を画す、様々な独自の特 長を備えていました。
当時一般的だったように、すべての機能は機械的 に実装されており、フォーマーは中心部にある電 気モーターによって駆動されていました。この頃 Hatebur では、この技術をさらに最適化すること はもうほとんどできないという確信に至っていまし た。大幅な改善を図るには、新しいアプローチが いくつも必要だったのです。そこで開発チームは、次の進化の段階に進むための作業にとりかかりま した。
2003 年から 2005 年には、AKP 4-6 S の開発に より、最初の重要な進化のための一歩が実現しま した。このマシンには 6 つの成形工程があり、非 常に複雑な成形部品の生産が可能となっています。それにより、明確な市場のニーズを満たすことが
できるのです。さらに、重要な進歩が続きます。 AKP 4-6 S が、機械式 - 油圧式リニアインフィード とストレ ー ジ ス テ ー ション を 装 備し た 最 初 の Hatebur フォーマーとして稼働を開始しました。 従 来 の 機 械 式で の み 駆 動されるローラーイン フィードシステムと比較して、カットオフや成形部 品重量の精度が著しく向上し、成形部品がローイ ンパクトで打痕の少ない状態で搬出用コンベアベ ルトの上に置かれます。
現実的な思考による製品開発
AKP 4-6 S の製作には 15 名に及ぶ要員が関わり、 彼らはそれぞれの段階において様々な形態で協力 し 合 い、 共 同 で 作 業 を 進 め まし た。 これ は、 Hatebur における製品開発の一例を示すものです。 最初の最も重要な課題は、市場が求める要件を技 術的にどのように満たすことができるかということ について、アイデアからコンセプトへと発展させる ことです。次にはもう、最初の機能アセンブリーが 作成されます。それと並行して、役員会は規定の 進行方向が維持されているかどうかを継続的に確 認していました。開発プロセスのさらなる専門化を 進めるため、新型 AKP は一貫して以前に検証済 みの仕様書に基づいて実装されていました。しか し、潜在顧客の方たちが、マシンの技術的な性能 についてだけではなく、価格についても尋ねるの はもっともなことです。そのため、最初からコスト に目を配り、把握しておくことが大切です。
お客様のニーズを理解して満たす
2014 年末、最初の COLDmatic 4-5 ECO が納入 されました。このマシンは長年のお客様のニーズ に基づいたものです。このお客様は Hatebur の マシンを使用し続けたいと考えていましたが、明 確な目標価格の設定がありました。それを堅持す るため、お客様はすでに新しい道を歩み、具体的 な簡素化を図る用意ができていました。そこで Hatebur の開発チームは、「最大限まで削減を」 というコンセプトを完璧に実現し、お客さまとの協 力関係を長期にわたって確実なものとすることに 成功したのです。
COLDmatic 4-5 ECO は、製品開発のプロセスが 全体的にどれほど変化したのかを示しています。 それは明らかに、よりお客様志向なものになりまし た。以前は多くのメカエンジニアがしばしば「私たちが技術的にできることは何だろう?」という疑問 を呈していたものですが、今日私たちはお客様と 市場全体のニーズに的確に応えています。
分離型駆動技術が工程の可能性に革命をもたらす
2017 年には、よりシンプルなアプリケーションで すでに試行されていたサーボ技術を、周辺機器か らマシンの 心 臓 部 に 移 すことに 成 功しました。 Hatebur の試験場では、AKP 3-5 に分離型駆動式 トランスファーシステムが搭載され、量産準備が整 うまでさらなる開発が進められました。これにより、 実際の使用状況で技術を運用することが可能とな り、早い段階でマシンオペレーターやサービスエ ンジニアを参加させて、フィードバックを得ること ができました。サーボ技術の主要な利点は、その 柔軟性にあります。たとえば、グリッパーとトラン スファーシステムは以前にはすべて同じ速度で稼 働していましたが、個別制御が可能となりました。 設定はコントローラーを介して行われ、データに保 存されるので、非常に再現精度が高く、より簡単 な設定が可能です。
2018 年には、詳細な試験が行われた結果として、 COLDmatic CM 725 が市場に投入されました。こ のマシンは、驚くほどシンプルで正確なリニアイン フィードと、新しいサーボ技術によってマシンのキ ネマティクス的な可能性を巧みに拡張する柔軟性 に優れたトランスファーシステムを備えています。 市場導入の準備が整う前に、最初のお客様との緊 密な協同作業の中で、マシンのさらなる最適化が 行われました。
学際的なコラボレーションが加速
分離型駆動技術の導入は、製品開発におけるさら なる大きな変化を意味します。かつては、市場に 登場するのはすでに「考え尽くされた」マシンで、 その改良はわずかなステップでしか行われていま せんでした。しかし、新しい制御技術と進化を続 けるネットワーキングが、ハードウェアに大きな機 械的変更を加えることなく、ソフトウェアベースで 調整を行うことを可能にしました。これにより、新 機能を考案するための時間と費用だけでなく、実 際に実装するための時間と費用も低減することが できます。
分離型駆動技術の開発中に、機械工学と電気電子 工学のコラボレーションも真のブレークスルーを果 たしました。この学際的なコラボレーションはすで に長期にわたって行われてきましたが、今ようやく、それにふさわしい評価を受けています。これは革 新の重要な推進力となり、Hatebur における大き な強みの 1 つとなっています。
プレスラム機能用ダイレクトドライブ
2018 年と 2019 年には、次のマイルストーンとし て CM 725 にダイレクトドライブが搭載されました。 機械式のフライホイールの代わりに、エネルギー は電気式でコンデンサーに蓄えられるようになり ます。この新技術はお客様のマシンで初めて使用 され、それにより、Hatebur は運転中に新しい キネマティクスに関する方法を確認することがで きました。
この新しいシステムは、従来のプレスラム機能でも 引き続き運用可能です。同時に、制御ソフトウエア を介して新しい機能を使用可能にできることから、 様々なメリットが得られます。たとえば、既存の金型を使用して同じ成形速度を維持しながら、より 高い生産量を達成できます。基本的に、この原理 はスマートフォンに例えることができ、新しいアプ リと同様に、個別に提供される機能をダウンロード することができます。
ソフトウェアベースの制御の大きな利点は、大量 の生産データを記録し、評価できることです。それ らから、将来を見据えた生産、新しいマシンや機 能の開発のための知見を導き出すことができます。これがより体系的に行われるほど、Hatebur のマシ ンのオペレーターにより大きなメリットがもたらされ ます。
マシン設定用の Web ベースのアプリケーション 2022 年にはオンラインタイミングツールが導入さ れ、キネマティクス的プロセス設計のプロセスが デジタル化されました。このツールを使用すると、 部品の形状を描画して、適切な成型工程に移動さ せることにより、理想的な生産のための時間的な 順序を定めることができます。それにより、必要な 金型設計データとマシン設定データを、容易に追 跡可能な形で導き出すことができます。
オンラインタイミングツールの開発は、いわゆる MVP の原 則に従って行われています。この «minimal viable produc(tMVP)»、すなわち「実用最小限の 製品」のための基盤として、社内で開発された Excel 表が役に立ちます。これにより、個々のマシ ンコンポーネントの連携の設計のために必要なす べてのパラメーターがまとめられます。この表が Hatebur のアプリケーション開発者によってテスト され、確実に正しい結果が得られると、そこから幅 広く使用可能な、ウェブベースのアプリケーション が作成され、お客様の環境で実用試験用の MVP として利用できるようになります。
振り返ってみると、このオンラインタイミングツー ルの開発は、実際に市場の準備が整った状態にな る前に行われていました。Hatebur では市場分析 や特定されたお客様のニーズに基づいて行われる ことが多いのですが、製品開発を成功させるには、時には勇気が必要です。その勇気とは、自らの経 験を信じる勇気、そして要件の変化を理解する勇 気です。それと共に、時には自らの直感に耳を傾け、製品を推し進める勇気も必要でしょう。それでこそ、 納得がいくというものです。オンラインタイミング ツールに関するフィードバックは、その成功を私た ちに示してくれました。
現在と今後の展望
現在、Hatebur は稼働している生産中に収集でき るデータの記録と保存に集中的に取り組んでいま す。エッジデバイスの使用は、デジタルプロセス と物理的な環境の境界で膨大な量のデータを利用 可能にします。
この度、エッジデバイスを搭載した最初のマシン が納入されました。そしてそれと共に、新しい時 代への旅が始まりました。そこでは、今後数年間 で数多くのイノベーションが生まれることでしょう。最初のステップでは、マシンのデータを評価して、 たとえばいずれかのプロセスの変更が確認された 場合などに、必要となりうる処置を特定します(予 防保守)。このアプローチはさらに著しく進化して おり、同じ種類の複数のマシンのデータ画像から パターンを導き出し、それらを使用して、たとえば、 特定の条件下でのコンポーネントの一般的な耐用 年数を予測します(予知保全)。
そのようにして、Hatebur の開発者たちは相当に 明確な時間軸をもって様々なプロジェクトを進めて います。同時に、まさしくビッグデータとの関連に おいて、将来どのような可能性が生まれるのかを 予測するのが難しい分野も数多くあります。それは 私たちが積極的に、かつ注意深く前進し続けるた めの十分な理由です。そして同様にお客様である 皆さまが、高揚感と信頼感と共に、Hatebur との 未来を展望するのにも十分な理由です。