02.11.2022

Hatebur AMP 70 におけるマシンフレームの交換、それはまるで「心臓手術」

Hatebur の AMP 70 HFE のような長寿命フォーマーでも 20 年間稼働し続けて性能限界に至ったため、GKN Driveline 社(ドイツ・トリアー)は 2011 年に Hatebur の新型 HOTmatic HM 75 XL を代わりに導入しました。しかしながら当時、同社は受注業務があふれていたため、旧マシンもさらに約 10 年ほど生産を続けなければなりませんでした。そして今、品質実証済みのフォーマー AMP 70 HFE のマシンフレームが刷新されました。これは、すべての関係者が最大限の力を発揮するよう求められた、たいへんな力わざでした。2021 年春から、今や 30 代になったマシンが新しい輝きを放っています。

20 年も経てば十分だ、もう既存の Hatebur 熱間フォーマー AMP 70 HFE を交代させなければ、と、ドイツ・トリアーにある GKN Driveline 社の責任者たちは 2010 年に決定しました。そして、最大の Hatebur フォーマーである新型 Hotmatic HM 75 XL が注文および据付されたのです。それは 10 年前のことでした。しかしながら皆の予想を超えて、金融危機の後に経済が力強く回復し、自動車業界からご発注の問い合わせが殺到したのです。そこで、旧フォーマーはさらに稼働し続けなければならなくなりました。
そして、このフォーマーがごく最近まで素晴らしく耐え抜いて持ちこたえたことは、一同を驚かせました。「最後まで、この優れた旧 AMP 70 は週 20 シフトで週あたり 165,000 個のハイランナー部品を生産し続けていました。私たちの最大限の敬意を受けるに値します」と、責任者である、GKN Driveline Trier 社プロジェクトリーダーのドミニク・ガンゴルフ氏は述べています。
 

根治のために良い結果となるように決断が下された

とはいえ 30 年間の非常に厳しいストレスから、マシンのベースエレメントにもその痕跡が見られ、小さな亀裂が確認されました。マシンの交代か、修理か・・・?それが根本的な問題で、あらゆる側面への考慮と徹底した計算の後に下された決断は、修理する、というものでした。しかしながらこれは一種の根治、この場合はマシンフレームの交換を意味しました。「そのような交換は、いわば心臓を開いて手術を行うようなものでした」と、ガンゴルフ氏は強調します。それは、GKN Driveline Trier 社もこれまでに経験したことのないものでした。「そして私たちにとってもこれまでになかったことでした」と、マシンメーカーである Hatebur のシュテファン・ビューレルは述べます。彼は何年にもわたり GKN Driveline 社を担当しています。
 

フェラリスタの下でセンセーションを巻き起こす

GKN Automotive 社は世界中で活動を展開しているティア 1 自動車産業サプライヤーであり、BMW、Mercedes、Porsche あるいは Ferrari のようなあらゆる有名な自動車メーカーの車両駆動用コンポーネントにおけるスペシャリストです。たとえば、ある Porsche 車ではトリアー製のドライブシャフトが巨大トルクをエンジンからアクスルへと伝達しています。また、自動車業界の耳をそばだてさせるようなプロジェクトもあります。と言いますのも、現在、Ferrari 史において初の SUV である F175 Purosangue(プロサングエ)用のドライブシャフトが製造されているからです。2022 年にフェラリスタの皆さんをたいへん興奮させている、一大変革です。GKN Driveline 社がこれに参加できることは、Ferrari GTC4 Lusso (F151)ですでに示されていました。

トリアー工場は、 世界中に 54 拠点および合計 27,000 名を超える従業員を擁する GKN Automotive 社の一部で、約 450 名の従業員を擁しており、同様に長い歴史があります。すでに 1964 年に Rheinmetall 社が 135,000 m2 の敷地で鍛造およびプレス工場を稼働させており、それを GKN が 1993 年に合併したのです。
 

プレミアムな自動車メーカーのハイランナー部品

トリアーは古代ローマ帝国の植民都市だったことがあり、現在、その面影が残る旧市街地にある工場で、毎年約 8000 万個の精密鍛造部品が生産されています。これらはおよそ 8 万トンのスチールから 11 台のフォーマーで成形されています。これらのコンポーネントは、主にピン、シャフト、リングなどのドライブシャフト部品のような、パワートレイン用のものです。これらには、100 g 未満の冷間成形部品から、数 kg の重量のある熱間鍛造部品まで含まれています。ハイランナー部品には、たとえば 1.5~3.5 kg の重さのバリエーションをもつジョイントピンがあります。お客様のほとんどはドイツ・ヘッセン州オッフェンバッハ・アム・マインやザクセン州モーゼル(ツヴィッカウ)などにある GKN の工場で、それらの工場では部品のさらなる加工を行っています。また、多くの OEM 企業も直接的なお客様に属しています。
 

日々の業務を確実に実行することにより、高い部品生産量を実現

Hatebur HOTmatic AMP 70 HFE は、非常に多種多様な部品に対応できる信頼のおける熱間フォーマーです。4 段階の成形工程および 15,000 kN の成形荷重により、最大直径 145 mm の鍛造部品を、400 g~5 kg のワークピースを用いて、1 分あたり 50~80 個、完全自動で生産します。高精度のサーボインフィードが、実績のある高いプロセス安定性と繰り返し精度をもたらします。これにより、マシンに直径 36~75 mm のバー材のフィーディングを行うことができます。

電子式バー材端末除去装置 ESA 600 は 50~150 mm の適切な切断長を保証します。HFE の装備により、鍛造温度での押出成形部品の製造が可能となります。「私たちのお客様は、そこから主にホイールハブ、ギアブランク、ベアリングリング、ドライブシャフト部品のようなベアリング部品や自動車部品の鍛造を行います」と、マティアス・プリシュルは述べます。「私たちのところでは、ここ数年でおそらく 3 億 5 千万個を超える部品を生産してきました。正確なところは誰にも言えないのでは」と、ガンドルフは述べています。
 

改造開始までに必要だった準備期間は 1 年半

作業の内容:重量 85 トンの熱間フォーマーの分解 – ホールからの移送 – 新しいマシンフレームの運び込み – すべての組付部品の取り付けとソフトウェアのインストール – 新しくなったフォーマーの初回運転開始。2020 年 9 月に作業が開始される前に、すでにプロジェクト責任者たちによって明らかにされ、計画され、討議された、約 1 年半に及ぶ作業がありました。それだけに、旧マシンフレームが 10 月初めにはむき出しの状態にされ、ホールから運び出されたときの喜びは、たいへん大きなものでした。同じサイクルの中で、新しいマシンフレームがホールに運び込まれ、基礎の隣に置かれました。
 

基礎も徹底的に点検および修繕される

旧マシンフレームが運び出された後、基礎もまた徹底的に点検され、修理されます。HOTmatic AMP70 HFE が 30 年もの長期間にわたって連日 35,000 回に及ぶ成形打と 15,000 kN の成形荷重で精密部品の圧造を行えば、基礎もまたダメージ無しというわけにはいかないからです。11 月初めには、責任者たちは真新しいマシンフレームを設置し、基礎の上に置きました。
 

チームは手を取り合ってスムーズに作業を進める

旧マシンフレームをむき出しにするには、すべての組付部品を取り除かなければなりません。これは特に、パイピング一式、配線および制御システムを含む電気設備全体、切断ユニット付きの上流の材料インフィード部、下流の部品排出部にあてはまります。保全技術者のマルクス・カゼルは、これについて次のように讃えています。「チーム全体が手を取り合って協同作業を進めている様子は、感動的でした。」£
 

コロナ禍および自動車業界の危機によるスケジュールへの影響

プロジェクト期間の全体にわたって、Hatebur のエンジニア 3 名が業務に関連する GKN 内外の人員のサポートを受けています。合計 24 名がプロジェクトに参加していました。「コロナ禍および自動車業界の危機については、もちろん、うまく対応できていました」と、ガンゴルフは述べます。とはいえ一方で、イタリアからの部品が予定通りに到着できないということもあり、コロナ禍での制限による遅れももたらされました。また、感染の拡大を防ぐための衛生コンセプトも確立しなければなりませんでした。
 

6 か月間にわたる改造の後の生産ラインの始動の試行

新しいマシンフレームが基礎の上に設置されると、すべての関係者を興奮で沸き立たせる、プロジェクトの熱い段階が始まりました。これまでの計画が正しいものだったか、準備は正しく行われたかが示されるときがきたのです。願わくば、すべてがうまくいきますように・・・。そして、成功しました!2021 年 2 月、およそ 6 か月間の改造期間を経て行われた試運転で最初の量産部品が生まれたとき、皆の喜びは多大なものでした。現在、GKN Driveline Trier 社ですっかり刷新された 135 トンの Hatebur マシンが稼働できるようになり、皆が安堵すると共に幸せに感じています。

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